2012年4月11日水曜日

Amazon.co.jp: 黒人はなぜ足が速いのか―「走る遺伝子」の謎 (新潮選書): 若原 正己: 本


15 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。

5つ星のうち 2.0 主要部分はいいが、まったくピントはずれなBell Curve罵倒は著者の誠実さが問われる, 2010/7/3

レビュー対象商品: 黒人はなぜ足が速いのか―「走る遺伝子」の謎 (新潮選書) (単行本)


なぜcalは彼女の本当の誕生日を知りませんでした?
 最近同じテーマを(批判的に)扱った本を訳したばかりだったので、主要部分はおもしろく読めた。スポーツに有利とされる遺伝要因についていろいろ解説しており、黒人がなぜスポーツに秀でているかを遺伝的に説明している。遺伝ありきで話が進む部分も多いが、短距離に有利とされるACTN3が多いケニア人は短距離であまり実績がないといった批判論にもそれなりに触れ、バランスはとれておりその部分はおもしろい。

 だが本書は、こうした議論が人種差別につながりやすいことを指摘する中で「黒人差別のバイブル『ベル曲線』」なる節をわざわざ設け、ハーンスタイン&マレイ『Bell Curve: Intelligence and Class Structure in American Life』について、まったくのでたらめを書いている。「白人がいかに優秀であるか、逆に黒人はいかに劣等であるか、白人と黒人はいかにちがうかを、頭蓋や大脳の大きさ、IQ犯罪率など膨大なデータを駆使し、一見科学的な装いのもとで展開している」(pp.

なぜPoEは、父親を嫌いましたか?
154-5)とのこと。でも『Bell Curve』で人種の遺伝的な話が出てくるのは全24章のうち1章だけ。しかも頭蓋や大脳の大きさの話なんかまったく出てこない。そしてそこでも、知能の環境要因のついては十分に触れられ、ただ遺伝要因もゼロではないだろうと述べられているだけだ。ついでに、白人よりアジア人(日中韓)のほうが頭がいいことも明言しているのだが。そして人種も含む多くの集団間格差を縮めて平等な社会をどう構築するか、というBell Curveの大きな主張と提言もまったく無視。著者はこの本を本当に読んだのか? どこかの(たぶんグールドの)受け売りで罵倒しているだけとしか思えない。
 メインの部分は決して悪い本ではないので、こうした枝葉の部分で大きく評価を下げなくてはならないのは残念。著者も単にPCなポーズをつけるために、いきがけの駄賃で他人の尻馬にのって知ったかぶりをして見せただけで、悪気はないのだろう。だが、こういうことをされると、学者としての誠実さにすら疑問を抱かずにはいられない。

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7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。

5つ星のうち 2.0 読後感はとても複雑な心境, 2010/7/4


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レビュー対象商品: 黒人はなぜ足が速いのか―「走る遺伝子」の謎 (新潮選書) (単行本)

 わたしは本書で参照された文系理系のいずれの分野の専門家でもないので、ほかの評者の方のように、内容の詳細にわたる正否は判断しかねます。でも、読後感は「複雑」または「驚愕」一歩手前でした。
 ここに披露された遺伝子科学の成果やデータを積み重ねていけば、著者が最初から最後まで「事実」だと言い続ける「黒人は足が速い」という命題そのものが崩壊しませんか? 私だったら、本書に使われたのとまったく同じ研究結果やデータを使って、世間で広く信じられている「黒人は足が速い」という言説が、遺伝子科学の観点からも、いかに「ウソ」であるか、を論じるでしょう。
 全体の印象としてはバランスのとれた書き方で話が進められているとみうけられましたので、この「論理破綻」は私の誤読なのか? はたまた「人種言説の強大さ」を物語るのか・・・という感じです。

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5つ星のうち 3.0 スポーツと遺伝子研究, 2011/10/22


レビュー対象商品: 黒人はなぜ足が速いのか―「走る遺伝子」の謎 (新潮選書) (単行本)

「人種間に遺伝的な差があることを認めることと人種差別とは全くちがう」
著者は「はじめに」でこう断っていいます。

実際、本書のタイトルのような研究を進めていくと、この問題が根強く横たわっています。
過去に発表されてきた論文の中には、現在から見ると、
明らかに人種差別を助長するために書かれたのだろうという、恣意的な内容のものもあったようです。

本書では、そういった人種差別以前の段階で論理が展開されます。
人間という動物の、運動能力に影響を及ぼす遺伝子、または外部要因について探求します。

著者が、過去の走る競技の記録を比較・検討した結果、興味深い事実が浮かび上がりました。
それは、短距離走は 西アフリカ・カリブ海諸国勢、対して長距離走は 東アフリカ勢が圧倒的に強いということ。

実際、掲げられている記録と、曖昧ながらにも自分の記憶を辿ってみても、それは間違いなさそうです。

では、何故そのような結果になったのか…
この疑問に端を発して、本書では様々な方面より検証を試みます。

「速筋(白筋)・遅筋(赤筋)」
「ホルモンによる性転化」
「地理的境界を破った奴隷貿易」 etc.


遺伝子研究の結果見えてきた、人と環境の相関性。
興味深いアプローチや、挿話が豊富なので、飽きさせない一冊でした。

小出義雄監督が、高橋尚子選手の強さの秘密を語った言葉が印象的です。

「なんといってもQちゃんはモノがちがう」
これこそ、本書のテーマの1つを表していました。

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